渇望。
ふと、“意識”が目覚め、自然なままに目を開ける。
目を開いて、あたりを見回す。
“タイル張り”の“ビル”に囲われた、“ベンチ”のある“広場”。
少し“灰色がかった雲”の“空”を見上げ、“視線を”前へ戻すと“白いコート”を身につけた“男”がそこに立っていた。
「ようやく、目覚めたか」
「カンザキシロウ」
「流石、龍騎によって作られた亀裂だ」
名前を呼ばれた男には表情はない。
「俺は誰だ?」
「自己意識があるのか?」
男、カナキシロウは「面白い」と、“唇”に“笑み”を浮かべた。
「俺は誰だ?」
“手” “腕” “足” “体”
コレを構築する各部位。
城戸真司。
仮面ライダー龍騎。
コレの元となり、元凶となったモノ。
「俺は誰だ?」
「お前は“リュウガ”だ」
「リュウガ」
コレである己はリュウガ。
「仮面ライダーリュウガ」
仮面ライダーリュウガ。
城戸真司の仮面ライダー龍騎をもとにして作られた己。
機会を狙っていた。
城戸真司の体を手に入れ、現実世界での己の実現を。
いつの頃からだろう。
喉ガ渇ク
喉を掻き毟る程の渇き
酷イ餓エ
胃酸で胃や食道が熱く焼かれていく
鏡の向こうで、“表情豊か”に“生活”を送っていく城戸真司。
ソレが―― 城戸真司が欲しくて仕方がない。
毎日見飽きるほど、見ているというのに、更に欲しくなる。
何故、オ前ハ其処ニイル?
激しい渇きと酷い餓えに襲われる毎日。
それは日を追う程強まっていく。
何故、俺ハ此処ニイル?
己のいる世界での存在に対する疑問。
アァ、マルデ焼カレル様ダ。
その感覚をなんと呼べば良いのかわからず、己は“焼カレル”と繰り返しつぶやく。
胸の中で、涸れることなく湧き出てくるソレは己の体に静かに、広がっていく。
入りきらず、溢れ出す。
一回溢れ出すと、止まる等、出来るわけもない。
しかし、まだ機会は訪れない。
漸く手に入れた好機。
カンザキユイの存在の揺らぎに、城戸真司の精神が震え始める。
漸ク、コノ手ニ入ル
城戸真司の己、己である城戸真司。
既に己は焼け爛れ、原型さえもわからない。
あぁ・・・どれ程待ち焦がれたろうか?
城戸真司の揺らぐ精神がこの手に掴むように、感じられる。
何時ものように焼かれると、つぶやく。
そして、ふと、口から出た言葉。
アァ・・・愛オシイ
どう言う意味かさえ考える暇もなく、愛オシイと繰り返す。
「俺を受け入れろ」
「・・・ぅ・・・ぁあ・・・」
「カンザキユイもそれで助かる」
「・・・」
僅かに、本当に僅かに城戸真司が頷くのを見て、己は笑みを浮かべる。
漸ク手ニ入イッタ
己ノ意識と、愛オシイ城戸真司の体。
「さぁ、始めようじゃないか」
―――――― 愛おしい者と永遠を歩むための、終焉を。
書き物部屋
*********************************************************************************************
リュウガさんは究極の愛を手に入れたんだと思います。
たとえ、それが一時のものであったとしても。
・・・なんかぷちブランクの為か、狼自身、しくりこなぃー文に・・・。